2025/12/15

正論


塾生から、「正しいことを言っているはずなのに、人との距離が広がってしまう気がする」という話がありました。私自身も、過去に思い当たる出来事がいくつも浮かんできます。

正論そのものが悪いわけではありませんが、確かに「正しさを振りかざす態度」だけでは、ときに人を遠ざけてしまうことがあるのだと思います。

正論を言った本人は、「間違ったことは言っていない」「相手のためを思って言った」と、ある種の満足感を得るのかもしれません。しかし、言われた側が受け取るのは、しばしば「理解された」という感覚ではなく、「裁かれた」「見下された」という感情です。

人は、正しい人のそばにいたいというよりも、自分を分かろうとしてくれる人のそばにいたいものです。だからこそ、共感を伴う正論であれば受け止められても、共感を欠いた正論からは、人は静かに離れていきます。

それは反論できないからではなく、「この人には本音を見せなくていい」と判断されているからなのかもしれません。正しいことを言えるのは大切な力ですが、その使い方次第で、人との距離は近くにも遠くにもなるのだと思います。

正しさよりも、相手の立場に寄ること。
それを忘れないことだと思います。