2016/02/23

丸覚えしちゃダメだって。考えるんだよー!

塾生の一人が無事に大学に合格したという進路報告のために,わざわざ塾に赴いてくれた。

県立の中堅-進学高に入学し,入学と同時に浦和英語塾に通い始めた。運動部と他塾を掛け持ちしながら,4駅も離れたところから,本当によく3年間通ってくれたと思う。まだあどけなさが残る中3坊主が,今日はずいぶん立派に見えて感慨深い。

「天才(Genius)とは,1%のひらめき・発想(inspiration)と 99%の汗・努力 (perspiration)の人である」 という言葉がぴったりな彼だったが,当初は,99%の使い方がよくなかった。

 「丸覚えしちゃダメだって!」 「そういうやり方では,どんなに苦労して丸覚えできたとしても,どうせすぐに忘れてしまう。」 

「考えるんだよー。プロセスにこそ価値あり。」 「結果はあとからついてくる!」 

課題の意図を考えずに結果だけ求めてしまうと,せっかくの努力は報われない。

今日は,その「考える」ということを世に問おた池田晶子さんの命日だった。「哲学者」と呼ばれるより「文筆家」であることにこだわった池田さん。代表的な著書の一つに 『14歳からの哲学〜考えるための教科書』(トランスビュー)がある。

「難しいことを,難しい言葉で考える」のではなく,「当たり前のことを,当たり前だからこそ不思議なことを,平易な言葉で考える」きっかけを中高生のみならず多くの人に与え続けている現代の古典である。

哲学 philosophy という言葉は,西周(にしあまね)によって作られた翻訳語であるが,この意味においては,まさに池田さんは,知(sophy)を愛する(philo)人(er),philosopher そのものだった。


今日彼と話していてうれしく思ったのは,進路が決まったばかりなのに,知への欲求に溢れているということだ。ブラインドタッチの練習を始めたと言うし,入学予定の学科の専門書や,今日購入したというレポートの書き方についての本まで見せてくれた。

彼には用意しておいた 『海を感じなさい〜次の世代を生きる君たちへ』  を進呈した。一節音読してもらうことが恒例になっているが,彼が選んだ7という数字の章は,親や友に対する感謝を忘れずにという内容で,今の君にはぴったりだねと話しをした。(実はどの章でもぴったりと言えるような本なんだけどね。)

「また来てもいいですか?」 彼は聞いてきた。「ん?英語については,あとは繰り返し音読すれば十分じゃないか?」と言うと,「たまに話しをしに来てもいいですか?」 と返ってきた。なによりのうれしい言葉の贈り物だった。

事を成し遂げる者は愚直でなければならぬ。才走ってはうまくいかない。
by 西郷隆盛