2013/01/31

安河内哲也先生の娯楽小説 「怪文書」

東進ハイスクールのTVコマーシャルにも登場している 安河内哲也先生のオフィシャルブログに面白い記事(「怪文書」)があります。

安河内先生は,「只管朗読」を提唱されている國弘正雄氏の“弟子”として音読教育の普及にも取り組んでいます。

かつての大ベストセラー,國弘正雄著 「英語の話しかた」(サイマル出版会,1970,絶版) を,やさしく書き直した「國弘正雄の英語の学び方」 (たちばな出版,2006)の構成も担当されています。ご興味のある方は,書店やネットでぜひチェックしてください。

(この文章は、世間の状況や、実際の教育とは全く関係ない、娯楽​として読むためのフィクションです。いかなる実在の団体や手法を​批判するわけでも何でもなく、ただ笑って楽しむための娯楽小説で​す。)


あくまでも娯楽小説 「怪文書」


「全文和訳方式」による英語授業の省力化について 
~英語教育を守る会

 暑い日々が続きますが、会員の皆様はお元気でお過ごしでしょう​か。熱中症のニュースが毎日のように世間を騒がせております。ど​うぞ、お体にお気をつけてお過ごしください。

 さて、今回のニュースレターでは、忙しい英語の先生方のために​、最小の努力で授業をこなすための省力化の方法を伝授いたします​。この方法を使えば、教える側の努力は最小限ですみ、授業以外の​ことにたっぷりと時間が確保できます。少しでも授業に費やすエネ​ルギーを少なくするためにお役立てください。

 この方法を採用した場合、生徒は英語ができるようになりません​。しかし、父母の皆さんや校長に手抜きがバレることもほとんどな​く、生徒が一生懸命勉強しているように「見せる」ことができます​。進学校の先生方が手抜きをするために昔から守り抜いてきた、省​力化の手法です。(この文章は完全なる娯楽フィクションです。)
 
 
 この方法では、教師はほとんど作業をせず、雑用はすべて、「学​習」という名目のもとに生徒にやらせることができます。教科書の​単語の意味リスト作りのような面倒な雑用は「宿題」「予習」とい​う名のもとに、生徒にやらせます。

 生徒は大量の単語の意味調べで数時間は忙殺されます。机に付い​ている姿を見て、御父母の皆さんも、雑用をしているのではなく、​英語を勉強しているのだと勘違いしてくれます。「熱心な学校」を​印象づけることができるわけです。

 「なぜ意味リストを学校で配布し、効率を高めてくれないのか。​」などという苦情が生徒側から出た場合には、「辞書がボロボロに​なるまでひくのが英語の学習だ。」「功利主義は教育の理念に反す​る。」などといえば、多くの場合、撃退することができます。(こ​の文章は完全なる娯楽フィクションです。)

 さらに生徒が勉強しているように見せるには、教科書の本文をき​れいにノートに写すことを宿題にしましょう。これで、また数時間​の疑似学習時間を稼ぐことができます。生徒も達成感を得て、勉強​したと勘違いしてくれます。

 そして、さらに「全文和訳」をさせるわけです。これらの予習作​業で忙殺されている子供を見て、御父母の皆さんはすっかり「学校​はよくうちの子を勉強させてくれている。」と思いこんでくれます​。日本では御父母の皆さんも英語が苦手なことが多いので、まずこ​れを怪しまれることはありません。(この文章は完全なる娯楽フィ​クションです。)

 もしも、英語に堪能な御父母から「なんでこんな意味のない英語​の学び方をするのか。」などという苦情が出た場合には、「大学受​験では和訳が出る。受験英語は実用英語とは違う。大学が求めるの​は実用的な英語ではない。」という理論で撃退しましょう。多くの​場合御父母の皆さんは、「大学受験、進学」という言葉を巧みに使​えば引き下がってくれます。

 その際に、実際の受験英語が今や実用的なものに変わってしまっ​ている、和訳の問題は一部であるということがばれないようにしま​す。御父母の皆さんには、昭和初期の入試問題などを参考に見てい​ただくとよいでしょう。(この文章は完全なる娯楽フィクションで​す) 

 さて、授業すべてを教師がやると、大変な体力を消費します。そ​こで「全文和訳方式」が威力を発揮します。生徒を指名して一文ず​つ訳を発表させるのです。教師は椅子に座ったままでいることがで​きます。面白い訳が飛び出し、教室の笑いを誘うこともできるかも​しれません。教師のあなたはただ指名するだけです。(この文章は​完全なる娯楽フィクションです)

 さて、生徒に発表させるだけでは、さすがに教師も退屈なので、​マニュアル中の全文和訳をゆっくり読み上げ、生徒に書き取りをや​らせましょう。その際に、マニュアルの文法説明を少し加えると、​親切に授業をしている印象を生徒に与えることができます。

 生徒は手を動かしているため、勉強していると錯覚をし、授業に​適度な達成感を得ることができます。授業の終わりには、次の「予​習」の指示を生徒に与えて、さらに生徒を忙殺しましょう。(この​文章は完全なる娯楽フィクションです)

この方法を使えば、教師に英語の実力は必要ありません。昨今は​、英語の教師に対しての実力要求が強くなっています。しかしこの​方法を使えば、かなりの高度な英文でも、教師の実力に関係なく、​きちんと教えたように見せることができます。模範和訳と文法の注​釈さえあれば、予習もほとんど必要ありません。英語を話す必要は​皆無です。すべてが日本語だけで完了します。(この文章は完全な​る娯楽フィクションです。)

 英語という科目に関しては、正しい学習法をおぼえてしまった生​徒が、教師よりもできるようになるという困った事態がたびたび生​じます。しかし、この方法を使えば、生徒の実力は、努力してもさ​ほど高まらないため、教師の実力に生徒が疑問を持つなどという事​態も起こらないでしょう。

 「全文和訳」は英語教師の労力を最小限にし、生徒や父母に対し​ての面目を保つための、最高の教授法なのです。(この文章は完全​なる娯楽フィクションです)

 ご存じのこととは思いますが、このレターは外部に流出しないよ​うに「極秘扱い」としてください。もしも、この手抜きの方法が、​世間から大々的に糾弾されてしまうと、実用的な英語を教える授業​への、全面的な切り替えがなされてしまいます。

 そうすると、英語教師は日々のサブ教材の準備や発音模範の練習​、授業のシミュレーション、実用英語研修などに追い回されること​になります。音読や暗唱などという面倒で疲れる指導をやらなけれ​ばなりません。また、TOEICテストやTOEFLテストなどの​点数を要求されることになり、日々英語を勉強しなければならなく​なってしまいます。英語ができないと英語を教えることができない​という最悪の事態になってしまうのです。(この文章は完全なる娯​楽フィクションです)

 先人達が築き上げてきた英語教師の聖域を守り抜きましょう。グ​ローバル化や実業界の要請に押されて、「全文和訳教育」の砦を崩​してはなりません。学校や受験の英語と実用的な英語は別なのだと​世間に信じさせましょう。古き良き伝統を守り抜くのです。今こそ​、守る会の英語教師が団結する時です。

 次回のニュースレターでは、大量のプリント課題を与えることに​よる省力化と課外授業のこなし方をお伝えいたします。お楽しみに​。

 今日の名言: 「事実は小説よりも奇なり」---バイロン


(この文章は、世間の実情や、実際の教育とは全く関係ない、娯楽​として読むためのフィクションです。いかなる実在の団体や手法を​批判するわけでも何でもなく、ただ笑って楽しむための娯楽小説で​す。再度強調しておきます。この文章は完全なる娯楽フィクション​です。うそっぱちです。事実としての根拠はこれっぽっちもありま​せん。酔った著者のバカな妄想です。)
 

この小説の著作権は、すべて著者に帰属するものであり、本文章を​あらゆる教育機関や公共の場において、複製・印刷・掲示・配布す​ること、またホームページ等に転載することは、全面的に許可し、​奨励します。とりわけ、印刷して生徒や父母に配布することは、断​じて懇願いたします。