2020/05/07

今は静かに自分を見つめるとき

池田晶子(2003)「14歳からの哲学〜考えるための教科書」より

 孤独というのはいいものだ。友情もいいけど,孤独というのも本当にいいものなんだ。今は孤独というとイヤなもの,逃避か引きこもりとしか思われていないけれども,それはその人が自分を愛する仕方を知らないからなんだ。自分を愛する,つまり自分で自分を味わう仕方を覚えると,その面白さは,つまらない友だちといることなんかより,はるかに面白い。人生の大事なことについて,心ゆくまで考えることができるからだ。
 考えるというのは,決して空虚なものではなくて,とても豊かなものなんだ。もしこのことに気がついたなら,君は,つまらない友だちと過ごす時間が,人生においていかに空虚で無駄な時間か,わかるようになるはずだ。ただ友だちがほしいって外へ探しに行く前に,まず一人で座って,静かに自分を見つめてごらん。
 そんなふうに自分を愛し,孤独を味わえる者同士が,幸運にも出会うことができたなら,そこに生まれる友情こそが素晴らしい。お互いにそれまで一人で考え,考え深めてきた大事な事柄について,語り合い,確認し,触発し合うことで,いっそう考えを深めてゆくことができるんだ。むろん全然語り合わなくたってかまわない。同じものを見ているという信頼があるからだ。
 本当の友情を知るということは,人生のひとつの喜びだ。うわべの付き合いだけの友だちの多さなんかより,たった一人でも,君はそういう友だちを見つけるのがいい。大丈夫,そう思っていれば,必ずそれは見つかるよ。それまでは君は,自分の孤独を,うんと豊かにして待っているんだ。だって,そうでなければ,素晴らしい友だちが現れた時,君は彼に答えることができないじゃないか。