2019/02/12

煩悶(はんもん)を受け入れる

『読んでおきたいとっておきの名作25』(旺文社,2015)の中で,編著者を代表して,渡辺憲司先生(現自由学園最高学部長)が寄せているエッセイ『「生きる」ということに解答はない』から,備忘のために以下記す。


若いという字は,驚くほど苦しいという字に似ているのです。苦しむことは,誰にでも,どの年代にもあります。苦悩や不安は,年と共に増すものです。

しかし,諸君たちの苦しみは,もう一歩で,もうすこしその一画を横にそらすことで,若さ即ち再生の可能性を秘めているのです。直線の一角から,横へそれる一画です。私はそこに〈苦〉から〈若〉へのしなやかさを見て取ります。

若いという字は,象形文字の解釈に従えば,右手をあげて神託(しんたく)を待つ動作だと言います。宣誓式の動作で右手をあげることと関連があるのかも知れません。

右手を左の胸に当て,すべての悩み,苦しみの鼓動を自己のものとし,心の鼓動を聞き,生きている血の流れを確実に察知して,いつの日か神託を待ち右手をあげて,新たなる次のステップに向かうのです。