邦訳 岡田義夫
青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。
すぐれた創造力、逞(たくま)しき意志、炎ゆる情熱、怯懦(きょうだ)を却(しりぞ)ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こういう様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶や、狐疑(こぎ)や、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰(あたか)も長年月(ちょうねんげつ)の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥(あくた)に帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰く 驚異への愛慕心、空にきらめく星辰(せいしん)、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰(きんぎょう)、事に處(しょ)する剛毅な挑戦、小児の如く、求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。
人は信念とともに若く 疑惑と共に老ゆる。
人は自信とともに若く 恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる。
人は自信とともに若く 恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる。
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力の霊感を受ける限り、人は若さを失わない。
これらの霊感が絶え、悲歎(ひたん)の白雪(はくせつ)が人の心の奥までも蔽(おお)いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、この時にこそ人は全くに老いて、神の憐みを乞うる他はなくなる。
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怯懦(きょうだ):臆病なこと
狐疑(こぎ):疑い深いこと
芥(あくた):ごみ。ちり。転じて、つまらないもの。
星辰(せいしん):ほし。また、星座。
欽仰(きんぎょう):仰ぎ慕うこと。