2013/01/09

強豪校の部活指導に思う


大阪市立高校のバスケ部キャプテンが昨年12月23日,自宅で首をつって自殺した。数日前に顧問宛てに書いた手紙が残されていた。そこには顧問から厳しい指導と体罰を受けたと書かれいていた。顧問の体育科教諭(47歳)も体罰を認めている。

大阪市教育委員会には,昨年度この顧問教諭による体罰の疑いがあるとの情報が寄せられていたが,学校側は「調査の結果,体罰はなかった」と虚偽の報告をし,報告を受けた市教委はそのまま放置した。ことなれ主義とはこのことを言う。

同年度同校では,男子バレー部の顧問が部員6人に対し,体育館の倉庫や更衣室などで,ほおを平手で殴ったり,体を蹴ったりするという体罰事件があり,その教諭は停職3カ月の懲戒処分を受けている。学校として何がしかの反省があって然るべきだったのに。

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今週7日(月)花園ラグビー場で全国高校ラグビー大会の決勝戦が行われた。私立常翔学園(大阪第1)が県立御所実(奈良)を下し,校名変更前の大工大高時代を含めると17大会ぶり5度目の優勝を果たした。試合後の野上常翔学園監督へのインタビューでは,目を赤くして涙をこらえようとする野上監督(社会科の先生)の姿がとても印象的だった。

僕らの世代では大工大高と言えば名将・荒川監督が思い出されるが,平成2年にその座を引き継いだ野上先生は「全国屈指のラグビー強豪校」の名に恥じることなく輝かしい戦績を残し続けてきた。僕のような凡人からは想像すらできないご苦労があったのだと思います。しかし,平成19年度の大会で3回戦で敗れた後は、審判の判定に抗議をして,監督を辞任し,部長へと退いた。

「勝とう勝とうと毎日追われるように練習していた。精神的に疲れ切っていた。」その後,当時の心境を語っている。

昨年度監督に復帰するまでの3年間は,中学生のちびっ子たちにラグビーを教えたり,クラブチームの発足に携わるなどして,より広い視野から,本人曰く「行き詰まった指導法」や自分自身見つめ直す課題を自らに課した。

監督復帰後,生徒をニュージーランドに引率した際も,現地の高校生が練習中に笑顔を絶やさず自由奔放にラグビーを楽しんでいる姿を見て「ラグビーをもっともっと楽しまないといけない」と再認識し,休日もしっかりとるなどして自主性を重んじる指導に変えたそうだ。
今回の私立常翔学園の優勝は,まさに野上監督の貴重な3年間の賜物(たまもの)だったのだと思う。


大阪市立高校2年生の男子生徒の死を社会は重く受け止めないといけない。

事件の背景に,強豪校ゆえの...という見方は少なくても違っているし,一バスケ部顧問の先生だけの責任に終わらせてはいけない。

黙認してきた,あるいは傍観してきた歴代の校長や教員,一部の保護者の方々に責任はないと言えるのだろうか。

体罰は連鎖する。これ以上恩師から受けた体罰を未来の教員へと引き継がせてはならない。今ここで体罰の負の連鎖を断ち切る覚悟を持つことが、せめてもの償いなのである。

(一部、スポーツ報知,日刊スポーツ,朝日新聞デジタルの記事を参考にさせていただきました。)