昨年11月,官民の給与格差是正のための国家公務員給与引き下げ法案が国会で可決され,これを受けて埼玉県は12月定例県議会で,2月1日からの実施を決められました。
47都道県のうち,7団体が1月1日から,3団体が2月1日から,22団体が3月1日から,地方公務員のレベルでも条例の改正手続が進められています。これに反対する他県すらある中で,県知事はよくご決断下さいました。
しかし,なぜ2月1日からなんかにしたのですか。
埼玉県には,3月末の定年を待って退職した場合,手当が約150万円減るということから,小中高校などの学級担任27人を含む教員89人と一般職員31人の計120人が,自己都合による早期退職を申し出ているそうですね。22日の記者会見の中で明らかになさいました。さらに,こうも言っておられました。
「特に担任を持っておられる教員の方々に関しては、私もいささか不快な思いを持っております。」 (埼玉県HPより)
正直言って,県知事のこの発言には違和感があります。
教職員組合などは,予め,現場に混乱が生じてしまう可能性があるということから,4月1日からの実施を求めていました。
でも県は,市県民税と地方交付税あわせて39億円ものお金が節約できるという財政上の観点から,2月1日からに決められた。それぞれの立場からすれば,いずれの主張にもうなずけます。
県は労使交渉の中で,予想される希望退職者を0人と回答していた。まさかこれほどの数になるとは考えていなかったのですね。
特に教育現場では人事に関して実際に混乱が生じているし,児童,生徒に対する影響も大きかった(かもしれません)。
一方で,東京都は「駆け込み」早期退職者は0人と聞きました。これは,予め,自己都合によって早期退職した場合は,さらに減額するという仕組みを作っていたからだそうです。
さて,果たして,こういう事態になったのは,上田県知事の言う通り,責めるべきは担任教諭側のモラルにあるのでしょうか。それとも,県民からすれば唯一の責任者であり,東京都のように予め何らの策を講じなかった上田県知事あなたの側にあるのでしょうか。
損得を勘定して教員としての行動倫理に欠けるという,世間の空気はよくわかります。私もその通りだと思います。でも,こういう制度を作ったのは知事,それを容認したのは県議会です。
県知事は会見の席上,こんなことも言っておられました。
「一般的に言えば,『責任ある立場の人たちは,責任を全うしなければならない』 と。そういうことが一般に言われていますので,御指摘がありました点について私は,責任のある方々については,しっかり責任を受け止めていただきたいというふうに思っております。」 (埼玉県HPより)
上田さん,何をのんきなことをおしゃっているのでしょうか。唯一責任をとれるのは,県民の負託を受けた知事職にある上田さん,あなたなんですよ。あなたが決めた制度の中で,混乱が生じているというのに,人ごとのように,個人のモラルのせいにして。読み返すたびにだんだん腹が立ってきますよ。
車のディーラーの方には申し訳ありませんが,例えさせていただければ,
上田さんが社長,県内にたくさんの営業所があって,ある営業マンが,商談中に,中途半端に成立を待たずに自己都合で退職。顧客からすれば,「いったい,ここの営業マンはどうなってるんだ!」ですよ。たまたま営業所に居合わせた社長がその顧客に対して「営業マンに対するそしりは免れませんね。一般的に言って,営業マンという責任ある立場にいる者は,...... しっかり責任を受けとめていただきたいというふうに思っております。」なんて言ってるのと同じことですよ。この社長の物言いに,顧客は 「…… 。」 絶句しますよ。まずは謝罪でしょって。
これほどマネジメントされていない組織ってありえますか。
定年退職まであと2ヶ月というところまで奉職されてきた人に,こんな微妙な判断を迫ったあげく,「不快だ」 などと言われた人の心情を想像してみてください。上田さん,責任は,政治家のあなたにあるのですよ。