それでも,僕は最後には小説版を書いた。書きたいと,いつからか気持ちが変わった。その理由は,どこかに瀧や三葉のような少年少女がいるような気がしたからだ。この物語はもちろんファンタジーだけど,でもどこかに,彼らと似たような経験,似たような想いを抱える人がいると思うのだ。大切な人や場所を失い,それでももがくのだと心に決めた人。未だ出逢えぬなにかに,いつか絶対に出逢うはずだと信じて手を伸ばし続けている人。そしてそういう想いは,映画の華やかさとは別の切実さで語られる必要があると感じているから,僕はこの本を書いたのだと思う。新海 誠