接続詞の as は通例,[時・理由・様態]を表す副詞節を導きます。どの意味を表すかは as を見たただけでは決まりません。主節との関係で論理的・常識的に考えなければならないところが他の接続詞とは違うところです。なお,副詞節は基本的に主節の動詞を修飾します。
[時]
As he became older, he grew more selfish.
(彼は年をとるにつれて,ますます利己的になった)
As I closed the door, the telephone rang.
(私がドアを閉めたときに,電話が鳴った)
A good idea occurred to me as I was speaking.
(話しているうちに,名案が浮かんだ)
He whistled as he walked.
(彼は歩きながら,口笛を吹いた)
[理由・原因]
As my bike broke down, I took a bus to school.
(自転車が故障したので,学校までバスで行った)
I turned off the television as no one was watching.
(だれも見ていなかったので,私はテレビを切った)
[様態]
Do as you were told.
(言われたとおりにしなさい)
ところが,次の文の as は,直前の名詞を限定する形容詞節を導いています。( as の後ろに完全な文がきていることが,as が接続詞であって,疑似関係代名詞の as とは違うところです。)
Life as we know it cannot exist without water. [it = life]
(私たちが知っているような生命体は,水なしでは存在しえない)
Apple pie as Dorothy makes it is a work of art. [it = apple pie]
(ドロシーが作るアップルパイはまさに芸術品だ)
さて,『銀河鉄道の夜 九、ジョバンニの切符 p.133(宮沢賢治)』にも,133頁になって初めてこの表現が出てきました。「鳥捕り」のせりふです。
「あれは,水の速さをはかる器械です。」
これをロジャーパルバースさんは,
‛That's an instrument for measuring the speed of the water as it flows.’
と翻訳しています。
(あれは,流れる水の速さをはかるための器械です。)
the water as it flows [it = water]
ここでは,名詞限定の as もさることながら,「水の速さ」 を 「流れる水の速さ」 と翻訳しているところが素晴らしいです。英語の論理性に驚嘆させられます。
(参考図書)
『チャート式シリーズ 基礎からの新々総合英語』 数研出版
『英文法解説 改訂三版』 金子書房
『英語で読む 銀河鉄道の夜』 ちくま文庫