2015/11/20

君たちに私の憎しみはあげない

パリでの同時テロ攻撃で,最愛の妻を失ったフランス人のアントワーヌ・レリスさん(35歳)がフェイスブック上に掲載したメッセージが,世界中に共感の輪を広げています。
 
憎しみや怒りの連鎖を断ち切って見せることこそが,一市民として出来うる,テロリストに屈しないための最大の戦いであるという覚悟のメッセージです。

英語訳は,「英インディペンデント紙(こちら)」から,日本語訳は,朝日新聞(こちら)」と「毎日新聞(こちら)」からのものです。
 
 
"Vous n'aurez pas ma haine"
「君たちに私の憎しみはあげない」
 
“Friday night, you took an exceptional life - the love of my life, the mother of my son - but you will not have my hatred.
 
金曜の夜、君たちは素晴らしい人の命を奪った。私の最愛の人であり、息子の母親だった。でも君たちを憎むつもりはない。(朝日)

金曜日の夜。君たちは特別な人の命を奪った。私の最愛の人であり、息子の母親だ。だが私は君たちを恨まない。(毎日)
 
I don't know who you are and I don't want to know, you are dead souls.
 
君たちが誰かも知らないし、知りたくもない。君たちは死んだ魂だ。(朝日)

私は君たちが誰であるかを知らないし、知りたくもない。君たちは死した魂だ。(毎日)
 
If this God, for whom you kill blindly, made us in his image, every bullet in the body of my wife would have been one more wound in his heart.
 
君たちは、神の名において無差別な殺戮(さつりく)をした。もし神が自らの姿に似せて我々人間をつくったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた銃弾の一つ一つは神の心の傷となっているだろう。(朝日)

君たちは、神の名において無差別な殺りくをした。もしその神が、自分に似せて私たちをつくったとすれば、私の妻の体に撃ち込まれた弾丸の一つ一つが、彼の心の傷になっただろう。(毎日)
 
So, no, I will not grant you the gift of my hatred.
 
だから、決して君たちに憎しみという贈り物はあげない。(朝日)

私は君たちに憎しみの贈り物をあげない。(毎日)
 
You're asking for it, but responding to hatred with anger is falling victim to the same ignorance that has made you what you are.

君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。(朝日)

君たちはそれを望んだのだろうが、怒りで憎しみに応えるのは、君たちと同じ無知に屈することになる。(毎日)
 
You want me to be scared, to view my countrymen with mistrust, to sacrifice my liberty for my security.

君たちは、私が恐れ、隣人を疑いの目で見つめ、安全のために自由を犠牲にすることを望んだ。(朝日)

君たちは私が恐れ、周囲に疑いの目を向けるのを望んでいるのだろう。安全のために自由を犠牲にすることを望んでいるのだろう。(毎日)
 
You lost.
 
だが君たちの負けだ。(私という)プレーヤーはまだここにいる。(朝日)

それなら、君たちの負けだ。私はこれまでと変わらない。(毎日)
 
I saw her this morning.

今朝、ついに妻と再会した。(朝日)

私は今朝、妻と再会した。(毎日)
 
Finally, after nights and days of waiting.

何日も待ち続けた末に。(朝日)

幾日も幾夜も待ち続けてやっと会えた。(毎日)
 
She was just as beautiful as when she left on Friday night, just as beautiful as when I fell hopelessly in love over 12 years ago.

彼女は金曜の夜に出かけた時のまま、そして私が恋に落ちた12年以上前と同じように美しかった。(朝日)

彼女は金曜日の夜、出かけた時のままだった。私が12年以上前、激しい恋に落ちた日と同じように美しかった。(毎日)
 
Of course I am devastated by this pain, I give you this little victory, but the pain will be short-lived.

もちろん悲しみに打ちのめされている。君たちの小さな勝利を認めよう。でもそれはごくわずかな時間だけだ。(朝日)

もちろん私は悲しみにうちひしがれている。君たちの小さな勝利を認めよう。だが、それも長くは続かない。(毎日)
 
I know that she will be with us every day and that we will find ourselves again in this paradise of free love to which you have no access.

妻はいつも私たちとともにあり、再び巡り合うだろう。君たちが決してたどり着けない自由な魂たちの天国で。(朝日)

妻はこれからも、いつも私のそばにいて、私たちは、君たちが決して近づくことができない自由な魂の天国で一緒になる。(毎日)
 
We are just two, my son and me, but we are stronger than all the armies in the world.

私と息子は2人になった。でも世界中の軍隊よりも強い。(朝日)

私は息子と二人になった。だが私たちは世界の全ての軍隊よりも強い。(毎日)
 
I don't have any more time to devote to you, I have to join Melvil who is waking up from his nap.

そして君たちのために割く時間はこれ以上ない。昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければいけない。(朝日)

君たちにかまっている時間はもうない。昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければならない。(毎日)
 
He is barely 17-months-old.
 
彼は生後17カ月で、(朝日)

まだ1歳と5カ月になったばかりの彼は、(毎日)
 
He will eat his meals as usual, and then we are going to play as usual, and for his whole life this little boy will threaten you by being happy and free.

いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。(朝日)

いつもと同じようにおやつを食べ、私たちはいつもと同じように遊ぶ。この子の生涯が幸せで自由であることが、君たちを辱めるだろう。(毎日)
 
Because no, you will not have his hatred either.”

彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。(朝日)

君たちには彼の恨みですら、あげることはない。(毎日)


※朝日新聞 2015年11月20日01時18分更新
※毎日新聞 2015年11月20日15時11分更新