2017/03/28

合宿

各地から集まった12歳から19歳の子どもたちと先生たちが参加する4泊5日の合宿に,日曜日の一日だけ参加させてもらった。場所は関東山地の山奥にある廃校になった小学校。

午後,玄関前にクルマを停めるとわざわざ子どもたち全員で外まで迎えに出てくれた。それから校舎内を一部屋ずつ案内してくれて,音楽室ではピアノの周りに用意された椅子に案内され一人が本格的なピアノ演奏を披露してくれた。

隣に座った子に 「これは僕のためにやってくれてるの?」と尋ねたら「そうなんですよ」と言う。これまではこちらが子どもたちを案内したり説明したりすることはあっても,こういう経験は滅多にないことなので,うれしはずかしなんだかとっても胸が熱くなった。

餃子を作った。中身づくりと焼くことは先生たちがやってくれるので包むほうである。ひとりの先生が一度だけ包み方を「見せて」くれた。「はい,こんな感じでね」と言ってそのまま席を離れてしまった。教えてはくれない。ただ包む工程を見せて出来上がりをみんなの前に置いただけ。

子どもたちは経験ゼロの様子。最初のうちは自分が見た包み方を再現しようとするだけで出来栄えになかなか注意が回らない子もいた。これって微妙にひだのついた生八つ橋じゃんみたいな。

すると一人の子が「どうすれば半月状になるのかなー」とつぶやいた。半月状とはいい言葉だと感心した。黙々と作っている子どもたちにもきっとその言葉が響いていたのだと思う。この一言で出来栄えのほうにも意識が向くようになり,それぞれが考え工夫し始めた様子が感じられた。

中身の量,ひだの幅や寄せ方など試行錯誤を繰り返して,最後には先生が作った餃子らしい餃子に全員が限りなく近づくことができた。


教えることの本質が自分の頭で考えさせる力をつけることにあるとするなら,意図的にそうされたかはどうかはわからないが,結果的に子どもたちも僕も大いに楽しい学びの時間を共に過ごすことができた。

合宿ではとにかく自由に行動してよいという。一切指示をしたりされたりすることはない。だから一人ひとり考える。考えて行動する。山奥の中ゆったりした豊かな時間が過ぎていった。


夕食後は子どもたちと先生たちも交えてセブンブリッジで遊んだ。数十年ぶりである。遊びは真剣にやるからおもしろいわけで,立場を越えた真剣勝負は2時間以上に及んだ。1位はこの合宿を紹介してくれた高3生になる浦和英語塾の塾生,2位はほぼビギナーズラックの私だった。

このまま泊まって先生たちと酒を酌み交わしながらいろいろなお話しを聞かせてもらいたかったが,翌日午後からの塾のことを考えるとそういうわけにもいかずに,ひとつの心残りになった。小雨の中を出迎えてもらったときと同じように見送られ,後ろ髪を引かれながら帰路についた。


桜も冬の寒さが厳しいほど
美しくその花を咲かせるという。