当時は大してピンとはこなかったが、今では基礎の大切さを問うものであると解し、弊塾の学び方の核心的な考え方になっている。
足し算式の勉強は実に苦しい。1000にたどり着くまで10 を100回 足し続けなければならないが,なかなかたどり着くものではない。至難の業である。50回足した頃には最初の10回は忘れていたりして,たいてい途中で挫折する。話す,聞くなどの練習は皆無に等しい。
1.1+10=10
2.10+10=20
3.20+10=30
4.30+10=40
5.40+10=50
6.50+10=60
7.60+10=70
8.70+10=80
9.80+10=90
10.90+10=100 ・・・
あと90回10を足し続けると1000になる。
果てしない道のり。
一方,掛け算式の勉強は,やさしい基礎を固めながら「わかる」「わかる」を繰り返して進めていくので,一見遠回りのように見えるが,そこは「急がば回れ」,「ゆっくり急げ」と言われる通りのことはある。
足し算式の5分の1の労力である 2 を10回 掛け算すれば1000を超えることになる。
1.1×2=2
2.2×2=4
3.4×2=8
4.8×2=16
5.16×2=32
6.32×2=64
7.64×2=128
8.128×2=256
9.256×2=512
10.512×2=1024
はじめは足し算式が優位だが,6回で逆転し,あとは掛け算式が飛躍的に伸びていく。
県下屈指の進学校に通う高3生が弊塾に入塾したのは1年生の11月。英語の成績はクラスで下から3番目,模試の偏差値も30代とさっぱり。理解力はずば抜けているが,音読は苦手。シャドウイングは言うまでもない。
そんな彼女の努力がようやく結果として現れるようになった。中間考査ではクラス順位3位,模試の偏差値も65を超えてきた。クラス順位というものはそう簡単には上がるものではないので本人は驚いていた。
「英語力は足し算ではなく掛け算である」という話はこの時にした。だから特段驚くことではないと加えた。
国公立を目指す多教科受験の彼女にとっては,弊塾での英語学習はとりあえずこれで「あがり」。過去問に向き合う実力は十分にできた。あとは音読とシャドウイングを繰り返し,直読直解法を磨き続けること。
要は何階建ての建物を建てるかである。基礎の深さに応じて建物の高さは変わるのである。