2019/10/31

ゆっくり急げ!

英語力は足し算ではなく掛け算である」— 学生時代、こう話す先生がいた。当時はピンとこなかったが、今では基礎の重要性を説く言葉として深く理解しており、これは弊塾の学習方針の核にもなっている。

足し算式の学習は、実に苦しい。1000にたどり着くには、10を100回足し続けなければならない。しかし、その道のりは長く、途中で忘れてしまったり、飽きてしまったりして、挫折することが多い。話す・聞くといった実践的な練習も乏しく、成果を感じにくい。

 1.1+10=10
2.10+10=20
3.20+10=30
4.30+10=40
5.40+10=50
6.50+10=60
7.60+10=70
8.70+10=80
9.80+10=90
10.90+10=100 ・・・

1000に到達するまで、延々と続く。


一方、掛け算式の学習は、基礎をしっかり固めながら「わかる」「できる」を着実に積み重ねていく。最初は遠回りに見えても、「急がば回れ」「ゆっくり急げ」という言葉の通り、実は最も効率的な道だ。

1.1×2=2
2.2×2=4
3.4×2=8
4.8×2=16
5.16×2=32
6.32×2=64
7.64×2=128
8.128×2=256
9.256×2=512
10.512×2=1024

10回目には1024に達し、足し算式を大きく上回る。

実際に、県内屈指の進学校に通うある高3生が弊塾に入ったのは高1の11月。当時はクラスで下から3番目、模試の偏差値は30台だった。理解力はあるが、音読が極端に苦手だった。

しかし、地道な努力を積み重ね、ついに模試の偏差値が65を超えた。

彼女の英語学習は、これでひとまず「あがり」。過去問に取り組む力は十分に身についた。あとは音読とシャドウイングを続けながら、直読直解の精度をさらに高めていくだけだ。

要は、「どれだけの高さの建物を建てるか」 ――その高さを支えるのは、基礎の深さである。基礎が深ければ深いほど、その上にそびえる塔もまた、高く、美しく立ち上がるのだ。